パワー半導体

I2・tはエネルギーを一定として損失を考慮する場合、ヒューズや大電流製品等は、I2・tを主として使用します。
一方、I2・√tは温度上昇分を一定として考慮する場合に使用します。半導体の場合、熱破壊はエネルギーがあるレベルに達して起きるのでなく、Siチップ温度がある温度に達して起きる現象と考えられます。 その意味で温度上昇分を規定して算出するI2・√tで考慮した方が、より現実に近い有用な算出検討方法となります。
どちらもI2が有りますが、これは大電流領域では半導体の性質は失われ、単なる抵抗となり、その抵抗をrとすれば損失は、I2rです。つまり、I2は損失分を現している事になります。従って、I2・tはエネルギー一定として耐量を規定するもので、I2・√tは温度上昇を一定に保つという考え方です。

SBDは本来、多数キャリア(電子)による電導作用を利用したものであり trr は存在しません。従って、仕様書やカタログにも記載しておりません。しかし、SBDには大きな接合容量(Cj)が存在するため、あたかも逆回復時間が存在するかのような現象が現れます。

SBD製品の接合容量特性グラフ以外は全て最大値であり、保証値です。接合容量特性グラフは代表値(TYP)を記載してあります。平均順電流定格のカーブは、線引きされている所が150℃に達する点を繋げたものです。

定常状態での順電流許容値を示しています。※過渡的な通電(過負荷電流、短時間パルサージ電流)は除く。
この実効順電流が仕様書記載値内であれば使用可能です。ただし、電流的に保証値内であっても、放熱環境や使用状況により発熱で使用できない場合もあります。

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推奨製品保管条件は下記のとおりです。
<梱包開封前>
保管温度 5~35℃ / 保管湿度 45~70%RH

リフローはんだ付けするSMDを対象にMSL基準が設定されており、京セラのパワーデバイス製品は全てMSL1です。(防湿梱包不要)

通電条件(Duty)によっては使用可能です。
方形波でピーク電流が2Aの場合、Duty50%以下であれば平均電流は1A以下となり、仕様書記載の環境条件内であれば保証範囲内となります。一方、Dutyが50%を超える場合、保証値を超えるため保証範囲外となり使用できません。また、ピーク電流が最大サージ順電流を超えないようお願い致します。

●各波形の平均順電流算出式

  1. 方形波    IF(Avg)=IFP × Duty
  2. 正弦半波   IF(Avg)=IFP × {(2×Duty)/π}
  3. 三角波    IF(Avg)=(IFP/2) × Duty

下記のファイルよりご確認ください。

 

モジュール製品使用上の注意(PDF/310KB)

直接の接続は避け、配線パターンを工夫し、均等の配線リアクトル及び、シリーズ抵抗が期待できるよう接続方法を検討することが必要です。特性の揃ったもので組み合わせてください(同一製造ロット、購入単位)。素子の特性は温度に密接な関係があり、温度のアンバランスは並列時の電流不平衡を生じます。そのため、密着させるかあるいは同一フィンに取り付けて素子温度を均等化させることが有効です。

締め付けトルクの推奨値範囲としては、0.4~0.8Nmです。

高速FRDのダイレクト2直列接続(電圧保護協調を取らない接続)における電圧均衡は難しいものと考えます。特に高速スイッチング時の転流サージ電圧は、2素子の逆回復特性のバラツキにより分担電圧が大きく異なります。他部品の熱影響や放熱環境によるバラツキも大きく影響します。従って、最低 0:100 が起こり得ます。
そのバラツキを軽減させるために素子個々に分圧コンデンサを付加し、分担させる必要があります。分担コンデンサの値は使用条件により異なるため、指定値はありません。数十pF~数百pFを目安に確実に電圧分担可能かの確認が必要です。
このC(キャパシティー)により、リッピングは抑えられます。定常的な逆電圧を抑えるのであれば、R(抵抗)を接続する方法もあります。
つまり、C・R を付けなければ電圧均衡は得られないと言うことです。

Axial型や小型SMD製品の様に1素子に1チップしか搭載していない物を並列接続させる場合には、一般論として、1:0.6(62.5%:37.5%)を目安にしてもらえれば良いと考えます。TO-220型に代表されるような、1素子内に2チップ搭載されているものは、同一パッケージであり、熱バランスも良い事から 1:0.8(55.6%:44.4%)程度の分流比と考えます。

I2・t すなわちエネルギー一定で溶断するヒューズを基に短時間パルス電流に対する耐量は考えられてきましたが、ディスクリート製品の場合には実測結果から I2√t に近似する事が確認されています。従って、大型大電流定格製品の場合には、I2・t で算出されますがディスクリート製品ではI2√t で算出したものを保証値と考えます。なお、この場合も無制限に耐量が上がるのでなく、100μs以下の通電に関しては100μsでの値を上限値と考えます。また、通電時間が数msで且つDutyが大きい場合には、実効値による制限が発生する場合があります。

●許容電流の算出式
I2√t =(IFSM/√2)2× √10ms
IFSM:仕様書、カタログ記載のサージ順電流耐量値
t :通電時間 (100μs=0.0001s がMin)
それぞれの値を上式に代入すれば、許容電流;I が得られます。ただし、波形、通電頻度により更に補正が掛かります。

方形波:I そのもの     三角波:I×√3     正弦半波:I×√2 

  1. 単発通電:セット寿命中に回路内で1回だけの通電
    算出された許容電流値そのもの
  2. 日に数回の通電:電源投入時等の不規則でインターバルの長い通電
    算出された許容電流値の 1/2(単発通電の1/2)
  3. 連続通電:連続性のある通電
    算出された許容電流値の 1/4(単発通電の1/4)

RECTANGLE の頭文字で、方形波を意味します。1周期を 360°とした際の通流角を表現しています。 例)Duty50%=RECT180°,Duty25%=RECT90°