「CASE」とは? 車載コネクタ市場の技術トレンドを学ぼう
自動車業界で求められている技術革新には、「CASE」という言葉がしばしば用いられています。CASEとは、
- Connected
- Autonomous/Automated
- Shared
- Electric
上記の頭文字を取った造語で、自動車業界全体の未来像を語る概念を意味します。こうしたモビリティの変革に対応するために、さまざまな新システムに対応可能な「車載用コネクタ」の需要が高まっています。
従来、車の機能を制御する車載コンピュータである「ECU(Electronic Control Unit)」は、車の機能ごとに設定されていました。しかし、最新システムを導入するには、車のあらゆる機能を一括で制御できる「統合ECU」が不可欠 です。この統合ECUに欠かせない部品が車載用コネクタなのです。
車載市場のテクノロジーロードマップに対応する、京セラの車載コネクタ動向
CASEの対応にあたり、「自動運転」を指すAutonomous/Automatedと、「電動化」を指すElectricを実現するには、高機能の車載コネクタが欠かせません。
Autonomous/Automatedの実現には、対象物までの距離を測るセンサの一種である「LiDAR」など、大量のセンサが必要です。そして、センサを搭載するには、車のさまざまな機能から伝達される多くの情報を統合し、高速で伝送させるコネクタが不可欠です。
また、Electricの実現には、車室外で使用するための高信頼性と耐振動性が必要。つまり、コネクタ自体に、連続する振動に耐えられることが求められています。
【図】今後の車載コネクタ動向
京セラが提供するコネクタは、情報の高速伝送機能と、高い耐震動性を兼ね備えています。
次のブロックでは、これらを実現する製品開発上での詳しい解析技術について紹介していきます。
コネクタに必要な、京セラの解析技術事例を紹介
上記動画でもご覧いただいた通り、京セラでは、車の進化に伴ってコネクタに必要となる要素技術の解析を通じ、製品開発に取り組んでいます。ここからは、主な4つの解析技術について紹介していきます。
解析技術の事例を紹介
京セラの解析技術は、下記の通りです。
発熱シミュレーション
コネクタの多極化や大電流化などが進んでいる今、通電中の発熱状況を検証することは喫緊の課題。京セラでは、基板とコネクタの3Dモデルを用いて通電条件を設定、電流値に対する温度上昇をシミュレーションで検証しています。
お客様から要望の多い通電仕様としつつ、製品設計段階でシミュレーションすることで、事前の材料設定や放熱の検討が可能となり、実際に使用するアプリケーションの安全性や、コネクタの劣化による信頼性の低下を回避できます。
電磁ノイズシミュレーション
コネクタはしばしば電磁ノイズを発生させ、他のデバイスに悪影響を及ぼします。システムエラーにつながる危険を防ぐため、車載製品におけるコネクタのノイズ対策も重要課題です。
京セラでは、電磁界シミュレーション設備を用いて、開発品の事前検討や既存製品のノイズ実力値の検証を実施しています。コネクタのシールドの有無について、EMI特性をシミュレーションすることで、シールドの効果や形状検討に活用します。
高速伝送シミュレーション
伝送デバイスの高速化に伴い、コネクタに求められる伝送特性も進化しています。京セラでは、電磁界シミュレータと回路シミュレータを用いて、基板を含むSパラメータを測定すると共に、基板部分の特性を差し引くことで、コネクタ単体の特性を取り出す技術を活用しています。
実機確認でも実測用基板によって、シミュレータとの整合性を測っています。測定器は50GHzまで測定でき、各種伝送規格への適合評価にも対応しています。
振動シミュレーション
耐振動性の確認は、従来、実物による長時間の振動実験を通じて行ってきました。しかし、振動シミュレータを使用すれば、周波数と加速度を事前設定できるため、実装基板のCADを再現、コンタクトの金属疲労状態を確認することが可能です。これにより、製品寿命を事前想定できます。
ここまでご覧いただいたように、京セラでは、昨今の車載トレンドに合わせたコネクタを、必要な要素技術の解析を実施した上で、製品開発に取り組んでいます。
最注目の技術、京セラの「高速伝送シミュレーション」
上記で取り上げてきたシミュレーション設備の中でも、注目すべき京セラの技術が「高速伝送シミュレーション」です。
コネクタの「フローティング構造」は高速伝送と両立させることが難しいといわれています。なぜなら、フローティングが持つ可動ばね部が空気に触れるという構造が、交流回路における電気抵抗の値、「インピーダンス」に乱れを引き起こしてしまうためです。これが起こると、高速通信のような高い周波数の信号を妨げてしまう可能性があります。
京セラの高速伝送シミュレーションは、端子の設計から見直しを行い、シミュレーションや試作検証によってインピーダンスの適正化を図っています。これにより、高速伝送に対応する、フローティングコネクタを生み出しているのです。
主要アプリケーションのラインアップを紹介
京セラの車載コネクタは、下記のような車載アプリケーションに使用されます。ここでは車載コネクタの使用用途である主なアプリケーションについてご説明します。
【図】コネクタが使用される車載アプリケーションの例
センシングカメラ
周囲の状況を取得するためのカメラです。自動運転における、道路の白線や信号、制限速度標識の認識の処理などに用いられることが多いものです。主にフロントガラスの上部に設置され、広範囲を感知しながら車の前方向の安全を確保するアプリケーションです。
ビューカメラ
車の周囲の映像をナビゲーションディスプレイに表示させ、ドライバーの運転負荷を減らすためのアプリケーションです。
LiDAR
レーザー光を照射することで、反射光を解析し、対象物までの距離や形状を計測する技術です。同じレーザーでも電波を用いた場合よりも光束密度が高く、短い波長で位置や形状を検出できます。
インバータ
直流電流を任意周波数の交流電流に変換する装置です。幅広い回転域でモーターを動かす必要のある電気自動車には、なくてはならない存在です。
IVI (In-Vehicle Infotainment)
「車載インフォテインメント」ともいわれます。インフォテインメントとは、「インフォメーション(情報)」と「エンターテインメント(娯楽)」を組み合わせた言葉です。運転手や同乗者に、音楽・映像で情報や娯楽を提供することで、運転のサポートや快適性の向上につなげるシステムです。
ECU / DCU
車載機器を制御するためのシステムの総称を指します。エンジンをはじめ、ヘッドライトやエアコンなどの電子機器の制御、緊急ブレーキや車間距離制御システムなどにも搭載されています。
基板対基板コネクタやFPC/FFCコネクタ製品のラインアップ
日進月歩の自動車業界を支える、京セラの車載用コネクタのラインアップは下記の通りです。上段がフローティングを有する基板対基板コネクタで、下段がFPC/FFCコネクタの紹介です。
車載用コネクタ製品ラインアップ
基板対基板コネクタ | ||||
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シリーズ | ||||
極間隔(ピッチ) | 0.4mm | 0.5mm | ||
特長 |
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FPC/FFC用コネクタ | ||||||
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シリーズ | ||||||
極間隔(ピッチ) | 0.5mm | |||||
特長 |
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※V-by-Oneは、ザインエレクトロニクス株式会社の登録商標です。
「FloXY」は、京セラ株式会社の登録商標です。
京セラは、車載市場の要求に対応するために、今後も積極的な開発を進めていきます。気になる製品がございましたら、下記のお問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。