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開発者インタビュー ~JIS0603形10μF品MLCC開発の裏側~

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世界に先駆けて京セラが発表したJIS0603形(0.6 x 0.3mm)業界最高容量クラスの10μF品MLCC。
新製品開発に至るまでの秘話やチャレンジし続けられた理由について、開発プロジェクトチームにインタビューしました。

※ JIS0603形のMLCCにおいて。2023年3月現在。京セラ調べ

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―今回の開発製品JIS0603形10μF品MLCCの概要を教えてください

製品画像

今回私たちが開発したのは、業界最高容量クラスJIS0603形(0.6 x 0.3mm)静電容量10μFのMLCC(積層セラミックチップコンデンサ)です。

 

スマートフォンやウェアラブル機器の高機能化に伴い、電子機器に必要なMLCCの容量は増加し、部品の搭載点数が年々増加しています。一方で、各種デバイスのサイズは小型化する傾向にあります。そのような背景において、小型化とMLCC1個当たりの高容量化が強く求められています。

 

小型・高容量化の変遷として、10μF品のJIS1608形(1.6mm×0.8mm)、JIS1005形(1.0mm×0.5mm)は2000年代から業界で開発されてきましたが、JIS0603形(0.6mm×0.3mm)の10μF品は技術的難易度が非常に高く、これまで製品化されていませんでした。

 

そんな中2023年3月、静電容量最大化に向けた京セラ独自の最先端要素技術および新工法開発により、JIS0603形(0.6mm×0.3mm)の10μF品を開発し、世界で初めてプレスリリース発表ができました。

現在では既に量産を開始しており、複数の採用実績もございます。

※ JIS0603形のMLCCにおいて。2023年3月現在。京セラ調べ

―開発する中で苦労した点と、それをどう乗り越えましたか?

JIS0603形10μFを達成させるためには、0.5μm以下の誘電体層と内部電極層をそれぞれ数百層も積層する必要があります。層間で1点でも導通すればショートし(不良となり)、単純に薄層化するだけでは安定した品質や信頼性、そして生産性を担保することができない点に苦労しました。

 

MLCCの小型高容量化・高信頼性化のためには、誘電体材料、シート成形、内部電極材料、印刷、積層、焼成などの「材料技術やプロセス技術の開発」が必要です。また不良の原因を明確化しフィードバックするための、ショート解析や微構造解析の「解析技術の開発」も必要です。この2つの両輪を上手く回して、開発スピードや課題解決への精度をあげることが重要です。

 

私たちは、品質や信頼性を担保しながら0.1μm薄層化するために、何十回、何百回、何千回と地道で気の遠くなるような基礎評価を毎日行ってます。その基礎評価を繰り返すことで、課題を抽出し、解決を図り、新たな基準を作り、そして基準の確度を上げることで、不良を発生させない仕組みを作ることを徹底しています。こうして、技術課題を乗り越えてきました。

係責任者

コンデンサ開発部
係責任者

開発担当者

コンデンサ開発部
開発担当者

開発担当者

コンデンサ開発部
開発担当者

社員の所属及び所属名称は、インタビュー時点のものです。

―プロジェクトチームのメンバー構成は?

チームメンバー

プロジェクトチームは、開発・生産技術・製造の3部門から選出された計8人で構成されています。部門を横断した開発活動でした。

 

本プロジェクトは、プロジェクトのメンバーが中心となって関係部門を巻き込み、部門の垣根を超えた「チーム力」で新製品開発を行いました。

  • 電子部品事業本部 開発部  :新製品設計、要素技術の創出、解析技術の構築
  • 電子部品事業本部 生産技術部:新工法の開発、設備の立ち上げ
  • 電子部品事業本部 製造部  :品質向上、生産の安定化

このように、求められる役割が異なる3部門が集まっているため、技術者一人ひとりの意見、モノを見る角度やスキルも異なります。そのため課題解決に向けて時には衝突することもありました。しかし「最先端製品を世界で初めてリリースする。衆知を集め、出来ないものを出来るようにする」という共通の信念を強く心に刻むことで、柔軟に意見を取り入れ、一致団結できたと感じています。

―なぜこの開発を進めようと思ったのですか?

京セラのコンデンサは、小型・高容量を得意としています。この分野で他社に負けたくない、負けられないという強い想いを持って、本開発をスタートさせました。

 

先にも述べたように、JIS1005形10μFが開発されてから年月が経っており、JIS0603形10μF品の開発は技術的難易度が非常に高いことは周知の事実でした。

だからこそ果敢にチャレンジし、新たな市場を切り開きたいと強く思いました。

 

またこれら開発活動を通じ、業界を牽引することで、京セラの経営理念である「人類、社会の進歩発展に貢献すること」を実践できると考え、開発を進めました。

―この製品は今後、どのようなところで活用されるでしょうか?

市場

この技術で開発した製品は今は通信市場向けですが、今後車載市場や半導体市場にも展開する予定です。

また、誘電体および内部電極の厚みにおける次世代超薄層技術を確立し、高温高電界下でも耐えうる、高品質・高特性の 最先端の製品開発にチャレンジしていきます。

 

こうして開発されるMLCCが、受動部品であってもデバイスを変え、デバイスがシステムを変え、ワクワクする社会やドキドキする世界での新たな価値に貢献できると、強く感じています。

京セラは、MLCCの新技術・新製品開発にチャレンジし続け、業界を牽引することで
経営理念である「人類、社会の進歩発展に貢献すること」を実践してまいります。

 

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特集ページ

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